先週の第1回目の打ち合わせで米国から為替のことも自動車のことも触れられずとりあえず交渉の範囲を物品にするような雰囲気になったことから日本では楽観論が広がっている日米貿易交渉ですが、明日以降本格的な交渉が始まるようです。
日本人が交渉下手なのは、交渉(その最たるものは外交ですが)を情緒的にのみ捉えて和気藹々を演出すればうまいこと行く、あるいは相手が100でこちらが50であれば中間の75で折り合えるはずというくらいの戦略しか持っていなく、相手の事情を徹底分析しないことにあると思われます。
アメリカは、米中貿易交渉で忙しいから日本どころではない、とか、同盟国だから、とか、安倍首相と仲がいいから、とか、戦闘機を買ったから、とか、で楽観論ばかりになっています。
しかし、米国が目指しているのは、『膨大な貿易赤字をなくしたい』ということです。
そのため、メキシコとの貿易協定を力ずくで反故にし新しい協定を結ばせました。いま、中国を関税攻撃して屈服させようとしている最中です。そして今度は日本、次は欧州特にドイツです。
まずアメリカは、牛肉と豚肉に関し、TPP水準までの即時関税引き下げを要求してくるでしょうし、日本もすぐ応じるでしょう。これは既定路線です。TPPと日欧EPAによって、アメリカの牛肉豚肉はEU各国やTPP各国に押されまくっていますから、アメリカの生産者が大きな圧力をかけているからです。
その他の農産物についても、TPP並みにすることは日本もすぐ応じるでしょう。
ただ、アメリカの農産物の関税を全部TPP並みに引き下げたところで、せいぜい年間数千億円増加するだけです。多分増加額は1兆円に満たないでしょう。
日本の切り札としては防衛費を使ってアメリカから戦闘機などの軍需製品を購入することですが、日本の防衛費が増加しているとはいえまだ年間5兆円であり、自衛隊員の給与などの人件費、そして既存の設備の維持費などが大半を占めるのであって、新規の武器購入費は8000億円くらいでしょう。それもすでに分割で買う約束のものが多く残っているので、新たに購入を約束しても年間数千億円の増加がせいぜいです。
そうかといって、交渉決裂になると、アメリカは自動車関税25%とか、自動車数量規制とかで脅してきます。
この状況で楽観論なのはあまりにも甘いと言わざるを得ません。
まずは、アメリカは牛肉豚肉でTPP並みの関税に引き下げを即時にするように求め日本はそれにすぐ応じて、あとは秋からにしよう、ということで収まるかもしれません。日本は選挙が控えていますからそれ以上のことは秋以降にしたいでしょうから。しかし、ひそかに合意はしていると思います。
すぐに牛肉豚肉関税をTPP並みに引き下げだけで、その他の交渉は秋以降ということでまたまた楽観論が支配するでしょうけど。
秋以降に聖域のコメや小麦も出てくると思っています。