映画『ある男』には、様々なことを考えさせられました。
三年以上結婚していて子供も生まれたのに、事故で死んでしまった夫が名乗っていた名前も経歴も全くの別人だったというミステリーです。
社会的なミステリーというジャンルに分類させられるかもしれませんが、私はそれよりも人間の潜在意識に深く切り込んだ作品のように思えました。
それは、ラストシーンからそう言えます。
この弁護士も、妻に不倫されていて、自らも在日三世という出自を持っています。
お金にもならずここまで入り込まなくていい案件なのに、思いっきり入れ込んでいきます。
私は、この映画のラストシーンに、重要なメッセージを汲み取りました。
人間は、潜在意識の中で、すべての記憶や経験を消したいのではないか、それが他人の名前や経歴を語るシーンになったのではないか、ということです。
この映画は間違いなく傑作だと思いました。