映画『アウトフィット』は、上質な作品でした。
舞台が一ヶ所だけという、ワンシチュエーション映画です。
ワンシチュエーション映画には、『12人の怒れる男』という名作があります。
三谷幸喜の作品にもワンシチュエーションでの傑作がいくつかあります。
それらと比べても遜色のない作品です。
1950年代のシカゴの紳士服店の主人が主人公です。
どんでん返しの展開があり、『やられた』感を味わえるのですが、魅力は決してそれだけではありません。
主人公の職人としての態度や身のこなし、知性も感じさせながら、飄々とした感じが仄かにあって、私には魅力に感じました。
最後のセリフ、完璧を目指さなければならないが、完璧は無理で、折り合いをつける必要がある、そういうときはどうするか。
『作業台に道具を並べて、やり直せばいい』
映画を見ないとこの言葉は普通の言葉ですが、この映画の最後、この主人公が呟くとき、洒脱さまで感じられます。
内容に踏み込むと、どんでん返しのネタをばらすことになりますから控えますが、面白い作品であることは確かですし、決して褒められた行状ではないにしろ、人生の対処のやり方を教わったような気にもなる作品で、おすすめです。