映画『ドライブ マイ カー』


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映画『ドライブ マイ カー』を観ました。

日本映画としては、本当に数少ない、見ごたえのある作品でした。

それほど、日本映画には深く考えさせられる作品が少ないと言うことですが。

これからは、ネタバレを含みます。

この映画の究極は、最後のシーンであり、これが理解できなければ、この作品を理解することは難しいと思います。

みさきがスーパーで買い物をしている。日本と違う国、どうやら韓国のようだ。買い物を終えて駐車場に向かう。そこには赤いサーブがあり、それに乗り込むみさき。

これにすべてが込められています。

日本映画には珍しい、見事なラストシーンです。

ふいに映画『シッピングニュース』が思い出されました。

『シッピングニュース』の家が、この映画では車なのだと思います。

人間の絶望と再生を描いた映画としてこの2つは共通します。

 

ただ、不満な点も多いです。

妻の音が、主人公に語り聞かせる、ヤツメウナギが前世だと思っている女子高生の物語。この女子高生は、音そのものだと思います。その女子高生が好きな男子学生の家にひそかに入っては自分のものを置いていきます。

この物語が伏線になるのだろうと思っていました。

だから、後半にかけて、音が置いていったものが何かわかる筋だろうと思いながら見ていたのですが、伏線ではありませんでした。

女子高生は別の空き巣を殺してしまいます。それであれば、音は何を殺したのでしょうか。

そこに煮詰めの甘さを感じました。

あと、『ワーニャ伯父さん』の舞台で、主人公の姪役の女性が手話で、『長い長い日々、長い夜を、苦しくても生き抜いて、死んだら神様に「私は苦しんできました」と言ったら憐れみをかけてくださる』と慰めます。

みさきの実家跡を訪ねたことと、このセリフによって、主人公は再生を果たし、ラストシーンに繋がるのだと思いますが、しかし、このセリフではラストシーンと整合性が取れないように思えます。

映画全体に哲学っぽくしているけど、残念ながらほころびがある感じです。

 

ただ、全体的に、脚本も映像も作り込んであって、日本映画としては上位に入る出来であることは確かです。