映画『峠』と映画『燃えよ剣』

久しぶりに日本映画を見ました。

『峠』と『燃えよ剣』です。

どちらも、司馬遼太郎原作の映画化です。

 


www.youtube.com

 

『峠』は、幕末の長岡藩の河井継之助が主人公です。

河井継之助は好きな人物です。

人物像もある程度知っているため、役所広司が演じているのは少し疑問でした。

 

現在、歴史上の人物の作品は役所広司が演じることが多く、演技もうまいため、無難なキャストとも言えます。

ネームバリューも申し分なく、名前で作品に重みがつくので製作側とすれば安全です。

 

しかし、実際の河井継之助は、もっとアクの強い、破れたところのあった人物だと思います。

 

実際の河井継之助は、大した家の出ではないのに、藩主父子に対してもズケズケとものが言える豪胆さがありました。

ガトリング砲にいれこんでいて、自分が直接操ったりしています。

ガトリング砲の威力を過大評価し過ぎの面があり、また、アメリカのモンロー主義を真似たどちらにもつかずに仲介役をしようとする、現実からはかなりはち切れた人物だったと思えます。

 

西軍との交渉が長岡藩の運命の分かれ目でしたが、河井継之助は完全に見誤っていました。

兵の要請にも応じず軍費の拠出もしない小藩が、時間をくれだの嘆願書だの調停役を買ってでるだのが通じるはずがなく、自らの交渉力を過信しすぎているとは思います。

米国と中国の間で中立でうまく立ち回ろうとした韓国が蝙蝠外交と見透かされて、どちらからも嫌われた例のように、圧倒的な力の背景がないと相手にもされません。

そこの交渉力という面での評価は私のなかでは低いのですが、やはりサムライとしての生きざま死に様は見事だったと思います。

 

この映画では、

『八十里 腰抜け武士の 越す峠』が出てきません。

『峠』という題名はこの句から来ているのでしょうから、そして、この句には継之助の魅力が込められているので出してほしかった気はします。

その代わり、

『形こそ 深山がくれの 朽木なれ

  心は花に なさばなりなむ』

という古今和歌集の歌が辞世の句のようになっていました。

これも、いい終わり方には思えました。

 

 

 


www.youtube.com

 

映画『燃えよ剣』は新撰組の土方歳三を主人公とした作品です。

日本映画にしては面白く描けている方だと思います。

上映時間も2時間28分と普通より長いのですが、新撰組が結成される前の、関東多摩で荒くれていた農民の時代からですし、清河八郎や芹沢鴨、近藤勇とリーダーまたは主要人物が変わっていくので、それを丹念に描くと、やはり2時間余りでは無理があり、10時間の連続テレビドラマでしたらいい作品になったような気がします。

 

残念ながら、2時間では、歴史上の出来事をなぞっていっている感覚しかありません。

 

殺害の仕方が何ともリアルで生々しく、天然理心流のカッコ悪さもリアルです。

人を殺害するには滅法強いが、面小手着けた道場では弱く人気がなかった理由がわかった気がします。